「iPhone 3G S」 日本は6月26日発売

Appleが6月8日(現地時間)から、開発者向けの年次カンファレンスWorldwide Developer Conference 2009(WWDC 2009)を開催している。


 このカンファレンスの基調講演でAppleは、100以上の新機能と100以上の新APIを盛り込んだiPhone OS の最新バージョン、「iPhone OS 3.0」を6月17日から配信することを明らかにした。初代iPhoneおよびiPhone 3Gのユーザーには無償で、iPod touchのユーザーには9.99ドルでアップグレードを提供する。

 また同日、最新のOS 3.0を搭載し、従来のiPhone 3Gから動作速度を大幅に高速化した「iPhone 3G S」も発表した。新たに付加された“S”はSpeedから取ったもので、6月19日から出荷する。日本ではソフトバンクモバイルが6月26日から販売を開始する。

 価格は、米国内のAT&Tで2年契約をした場合で、iPhone 3G Sの32Gバイト版が299ドル、16Gバイト版が199ドルとなる。ボディカラーは既存のiPhone 3G 16Gバイト版と同様、BlackとWhiteの2色を用意する。なおiPhone 3G Sでは提供されない8Gバイト版は、iPhone 3Gの販売を継続する。こちらは価格が99ドルになる。

■より高速な「iPhone 3G S
 iPhone 3G Sでは、さまざまな機能が高速化されたのが最大の特徴だ。メールの起動が約2.1倍、SimCityの起動が約2.4倍速くなるほか、メールに添付された Excelファイルを開く速度は約3.6倍、そしてNew York Timesのアプリを開く速度は2.9倍速いという。JavaScriptベンチマークテストの結果は、iPhone 3G(OS 2.2.1)が126秒だったのに対し、iPhone 3G(OS 3.0)では43秒、さらにiPhone 3GS(OS 3.0)では15秒と、劇的に速くなっている。また、新たにOpenGL ES 2.0もサポートした。下り最大7.2MbpsのHSDPAにも対応する。

 カメラ機能は300万画素に強化され、オートフォーカスもサポート。ピントを合わせるポイントは、画面内を直接タップして選択可能だ。露出とホワイトバランスは自動調整。暗所での高感度撮影や、最短10センチまで近寄れるマクロも利用できる。動画の撮影機能もサポートした。動画はVGA(640×480 ピクセル)の30fpsで撮影可能。オートホワイトバランス、自動露出に対応し、撮影した動画はYouTubeMobileMe、MMSやEメールを使って公開・送信できる。静止画撮影や動画撮影機能は、もちろんAPIを使ってアプリからも利用できる。

 音声認識機能も搭載した。ホームボタンを長押しすると音声認識用のインタフェースが立ち上がり、例えば“Call Scott Forstall”といえばScott Forstallに電話をかけられる。該当する番号が複数ある場合はどの番号にかけるかも聞いてくれる。現在再生中の音楽の曲名やアーティスト名を尋ねたり、Geniusプレイリストから似た曲を探してきて再生させたりも可能だ。ただ、日本語の音声認識に対応しているかどうかは明らかにされていない。

電子コンパスを採用し、端末の向きを寄り高精度に検出可能になったのも進化ポイントだ。新たに用意されたコンパスアプリで方位を示せるほか、 Androidを搭載したHTC Magic(HT-03A)のように、マップでGoogle Mapsの表示を方位に合わせて自動的に調整する機能も提供する。

 聴覚障害者や視覚障害者向けの補助機能として、Mac OS XiPod shuffleに搭載されている音声インタフェース「VoiceOver」も搭載。画面の文字を読み上げてくれる。さらに画面のズーム機能、白黒反転機能、モノラルオーディオ機能なども新たに備えた。

 ビジネスユースに対応するべく、データの暗号化、遠隔消去、暗号化したiTunesのバックアップ機能などもサポートした。「Nike+」にも対応する。

 さらに、バッテリーの持ち時間を大幅に改善した。ネットサーフィンなら約9時間、動画の連続再生なら約10時間、音楽の連続再生なら約30時間を実現。GSMでの連続通話時間も約12時間になったという。なお3Gの連続通話時間は5時間のまま変わらない。

App Storeは飛躍的に拡大
 基調講演ではこのほか、iPhone OSのこの1年についても振り返り、SDKのダウンロード数が100万に達したこと、App Storeでリリースされたアプリが5万本を超えたことなどが明らかになった。iPhoneiPod touchの累計出荷台数は4000万台を超え、アプリのダウンロード数は先日10億回に達した。ネイティブアプリケーションの開発が解禁され、アプリケーションの配布を担うApp Storeが開設されたのは2008年7月11日のこと。1年弱の間に、これだけのアプリが登場した背景には、開発のしやすさや配布の容易さなどがあったことは想像に難くない。

 App Storeにならって、AndroidAndroidマーケットを、NokiaはOvi Storeを、RIMはBlackBerry App Worldを開設、Palmもweb OS用にApp Catalogを提供しているが、こうしたサイトで提供されているアプリの数は、App Storeのそれには遠く及ばない。

■カット、コピー、ペーストだけではないiPhone OS 3.0の新機能
 iPhone OS 3.0は、すでに開発者向けのプレビューイベントで発表があったとおり、カット、コピー&ペーストを含む100以上の新機能を盛り込んだ、大きなアップデートとなる。アンドゥのサポートや、メールやメモ、SMSでのランドスケープモード(横画面)サポートなど、これまでユーザーが不便に感じていたポイントを多数改善している。

 端末内の検索機能が提供されるのもポイントで、メール(サーバ上を含む)、カレンダー、メディア、メモなどを横断して検索できるようになる。検索画面の「Spotlight」はホーム画面のすぐ隣に用意し、容易にアクセスできるようにした。

 また、iPhone上のiTunes Storeも改良され、米国では映画がiPhoneから直接購入・レンタルできるようになる(10Mバイト以上のデータは無線LAN経由でのみダウンロード可能な点はアプリや音楽と同様)。映画のほか、テレビ番組やオーディオブックなども直接ダウンロードに対応した。新たにペアレンタルコントロールを用意し、未成年者が特定のコンテンツにアクセスできなくする
機能も提供する。



これまで、音楽はDockコネクターBluetoothアダプタを接続しないとワイヤレスで視聴できなかったが、OS 3.0ではBluetoothA2DPをサポートし、ワイヤレスヘッドフォンなどがアダプタなしで利用可能になる。音楽再生中にiPhoneiPod touchを振ると曲をシャッフル再生する「Shake to Shuffle」機能も備えた。

 USBやBluetoothで接続し、iPhone経由でPCやMacをインターネットに接続できるtethering(テザリング)機能もOS 3.0の新機能。世界の22のキャリアがサポートを表明したが、残念ながらソフトバンクモバイルは非対応となっている。OS 3.0で提供されるMMSは、ソフトバンクモバイルを含む29のキャリアがサポートを表明。SMSと同じような画面でメールのやり取りが可能になる。

 Mobile SafariもOSのバージョンアップに合わせて機能が大きく向上、HTML5をサポートした。iPhone OS 3.0のSafariは、JavaScriptの実行が従来比で3倍も速くなっているという。HTTPストリーミングオーディオ/ビデオに対応し、接続に応じて画質を選択する機能も装備。ユーザー名やパスワードはオートフィルが利用できるので、毎回IDやパスワードを入力する手間が省けるようになる。ボイスメモアプリも新たに搭載した。

MobileMeユーザー向けの「iPhoneお探し」サービス
 このほか、新しい機能として「Find My iPhone」というサービスを始める。これはMobileMeユーザー限定の無料サービスで、Google Maps上で自分のiPhoneがある場所を確認できるというもの。iPhoneを紛失した場合などに、簡単に見付けられるという。

 このFind My iPhone機能を利用すると、iPhoneにメッセージを送り、アラート音を鳴らすことも可能。音はマナーモードにしていても鳴る。さらに、端末がどうしても見つからない、あるいは盗まれた場合などには、遠隔消去コマンドを送ってメールやアドレス帳の情報が消去できる。

■開発者向けにもさまざまなメリット
 開発者向けには、アプリ内課金や月額課金など、新たな課金方法が用意されたことや、Dockコネクター経由で周辺機器と通信するアプリが開発可能になったことなどがOS 3.0の大きなトピックとしてプレビューイベントでも紹介されていたが、今回の講演では改めてこうしたメリットを開発者向けに訴求。実際にアプリを開発しているデベロッパーが登壇してそのメリットや開発中のアプリを披露した。Appleは、アプリ開発や周辺機器開発により大きな自由がもたらされることで、さらに高度なアプリや周辺機器が生まれてくる可能性を示唆した。


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