「シュタインズ・ゲート」が気になってるけど最後の一歩が踏み出せないアナタに

Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (数量限定版) - Xbox360

Steins;Gate (シュタインズ・ゲート) (数量限定版) - Xbox360

●そもそも、これってどういうゲーム?

 「STEINS;GATE」(シュタインズ・ゲート)はXbox 360タイトルの「美少女ゲーム」(志倉千代丸氏談)、いわゆる「ギャルゲー」のジャンルに分類されるゲームです。10月15日に発売され、そろそろ購入者の多くがクリアを終えた頃だと思います。もちろん筆者も全クリしまして、ゲームレビューのサイトやブログなどを回り、面白さの余韻を味わっているところです。

 ところで、ニッチジャンルのギャルゲーであるにも関わらず、本作はゲーム好きの間の話題として今かなり盛り上がっています。そして、普段このジャンルを遊ばない層にまで、どうやら少なからぬ興味を抱かせているとのこと。これは歓迎すべき状況です。ゲームが好きなら、「STEINS;GATE」を遊ばないのは大損だと、プレイした者として言い切れます。なので「ギャルゲーは全然やらないけど、なんか気になるよ」および「少しはギャルゲーやるけど、これはそんなに面白いの?」というギャルゲー初中級者の皆さまへ紹介をしていきたいと思います。なお、普段からギャルゲーもしくはノベルゲーを好んで遊んでいるが、「STEINS;GATE」は未プレイという方がいるなら「今すぐ全力でダッシュして買ってこい」とだけ言っておきましょう。


●ギャルゲーってことは、女の子と仲良くするのが目的?

 いいえ違います。一般的にギャルゲーといえば、テキストを読み進め、主人公と複数のヒロインのハーレム状態から選択肢によって、それぞれのヒロインと結ばれるシナリオ(個別ルート、個別エンド)に分かれ、さらに作品全体をまとめる最後のシナリオ(トゥルーエンド)を読み終えてクリア、といった形式を指すかと個人的には思っています。「STEINS;GATE」もこうした構成を用いますので、ジャンルとしては確かにギャルゲーなのですが、シナリオの結果的にヒロインと結ばれるのであって、それが目的ではありません。

 これはなにも、ヒロインと仲良くするのが目的の軟派なゲームじゃない、と硬派ぶりたいのではありません。本作は科学アドベンチャーシリーズを名乗っている通り、シナリオを読み進めて、プレイヤーが行動の選択をし、決断を下した結果を驚き楽しむという点に主眼が置かれた、古典的なアドベンチャーゲームの良さがあります。つまり「ギャルゲーの文法で作られた正統アドベンチャー」とでも呼べばいいでしょうか。

 シナリオや演出、行動選択の誘導がとても巧妙で、ギャルゲーに馴染みのない方でもアドベンチャーゲームとして十分に楽しめます。だからこそ、「ギャルゲーだから」「ギャルといちゃつくのは興味ない」という敬遠はしないでチャレンジしてもらえると嬉しいです(しかし、ギャルって言い方も考えてみれば古臭いですね)。


●シリーズ前作をやっていなくても楽しめる?

 はい、大丈夫です。科学アドベンチャーシリーズ第1弾として「CHAOS;HEAD」(カオスヘッド)がPCで、また、シナリオやCGなどの要素が追加された「CHAOS;HEAD NOAH」(カオスヘッド ノア)がXbox 360でそれぞれ発売されています。シリーズの関連性は、世界観が同じ(CHAOS; HEADは舞台が渋谷、その1年後の秋葉原が「STEINS;GATE」の舞台)という点だけで、一部の設定が小ネタとして顔をのぞかせる程度です。

 シナリオが連続したり、密接に絡むわけではないので、安心して「STEINS;GATE」を遊んでください。もちろんシリーズ両方やってもOK ですし、その場合は順番を気にしなくても大丈夫です。例えるなら、ドラゴンクエストI〜IIIがロト三部作だといっても、ロト伝説でつながっている程度で、どれから遊んでも、またはどれかだけ遊んでも問題ないのと同じです。


●科学アドベンチャーって、理系の設定は苦手なんだけど

 TIPSで丁寧に説明されています。本作は科学アドベンチャーとして「タイムマシン」が重要なガジェットとして登場、活躍します。企画原案を担当した5pb.志倉千代丸氏によれば「タイムマシンはどういう構造なら可能になるのか、現在の最先端科学で可能な限り説明した、ハウツー要素満載の作品にチャレンジしたかった」とのことで、SFとしても読み応えのある内容に仕上がっています。

 そのため、日常では聞き慣れない物理学の専門用語などが数多く出てきますが、ボタン1つでTIPSが参照できますし、テキストのバックログも一発で表示させて読み返すことができます。その他にも、こうした科学的説明のある場面ではテキストや図の表現が豊富になり、概念だけを説明して数式は登場させないなど、分かってもらおうとする配慮が丁寧にされています。詰め込まれた情報は膨大ですが、けっして難解ではないので、科学アドベンチャーの醍醐味の 1つとして楽しんでいただきたいところです。

 まあ、ぶっちゃけ「タイムマシンは過去に行ける」っていうお約束さえ知っていれば、理屈が分からなくても大丈夫ですけど!


●体験版があるとストーリーとか判断しやすいな

 Xbox 360を持っていて、ハードディスクを装着していて、インターネットに接続しているなら、今すぐマーケットプレースから体験版をダウンロードしましょう。そうでない方は、「STEINS;GATE」の公式サイトでプロモーションムービーなどを見て雰囲気を感じてください。

 ストーリーを簡単に紹介しましょう。自分には選ばれた特殊な能力があり、狂気のマッドサイエンティストとして社会に混沌をもたらすのだ! …… と自称してしまう、大学生になっても「厨二病」で「邪気眼」で痛いヤツの岡部倫太郎が主人公です。狂気のマッドサイエンティストですので、彼は仲間を集めて日夜変なガジェットの発明に明け暮れています。たあいもない日常が続くはず、だったのですが、偶然にもタイムマシンを発明してしまい、それによって引き起こされる過去と現在と未来の齟齬に岡部倫太郎は振り回されることとなります。

 こうしてみると、いわゆる「タイムマシンもの」の典型的なプロットですが、散りばめられた謎と伏線、それらを解き明かすためにテキストをただ読むだけではなく、要所でプレイヤーが判断を下し、決断を行うというアドベンチャーゲームのスタイルが、それによって選ばれたシナリオや演出と相まって非常に秀逸な出来上がりとなっています。これはまさしく読んでのお楽しみ。


 さて、それよりもこのゲームで好き嫌いが別れる一番の難関は、主人公 岡部倫太郎の厨二病にあります。彼の話し方はとても芝居がかっていて、アニメの悪役のような高笑いや格好付けた喋り方が標準です。行動も変で、電源の入っていない携帯電話で「謎の“機関”に狙われている」などと、これまた居もしない仲間へ連絡してしまったりします。嫌ですね。友達はおろか、近くにすら居てほしくないと思う人が多いでしょうね。でも、これが主人公なので、ゲーム中はずっと付き合うことになります。

 また彼の友人たちも、なかなかに癖のある人物です。重度のオタクでスーパーハッカーの橋田至、コスプレ衣装制作が趣味の椎名まゆり、猫耳メイド喫茶で人気No.1のフェイリス・ニャンニャン、などなど。その上、こうした登場人物たちの会話でネットスラング、早い話がいわゆる2ちゃんねる語が飛び交うのも大きな特徴といえるでしょう。「2ちゃんねるを読んだり、書いたりもするけど、実際に会話で使うのは……」と感じる方は少なくないと思います。

 このあたりは個人の趣向なので、どうしても好きになれない、我慢できないとなったら仕方ないでしょう。体験版を通して遊んでみて「この雰囲気はつらい」と感じたのなら、残念ですがこの後も楽しめないと思います。逆に「面白いじゃん」「それほど気にならないかな」と感じたなら、ぜひ本編まで遊んでみてください。個別エンド、さらにトゥルーエンドのシナリオまで辿り着いたその瞬間、岡部倫太郎が厨二病でなければならなかった理由、厨二病だからこそできた演出、そして筆者としては数年に1度の傑作という評価を与えることに迷いのない、総毛立つ感動がそこにはあります。

 なお、体験版はプロローグ 〜 オープニングムービー 〜第1章の部分で構成されていて、通しプレイでおよそ3時間ほどかかります。内容は製品版とまったく同じですがセーブだけはできないので、一気にプレイしてしまうか、もし途中で止めるなら、続きを始める際にコントローラの設定で強制スキップを使えば、前回の中断点まで早送りができます。また、体験版は世界設定や登場人物の紹介で終わっていてシナリオ的にはこれから転がっていくので、この時点で気に入ったなら、第2章以降の展開で興奮すること間違いないでしょう。


●数量限定版と通常版があるけど、なにが違うの?

 数量限定版はビジュアル・コレクションとウソ発見器が付録になります。ビジュアル・コレクションはキャラクターや背景美術の絵、登場するガジェットなどの設定画、それに制作者のライナーノーツを収めた、ハードカバーの小冊子です。ページ数は多くなく、内容もゲーム本編で登場したり、Webや雑誌などで発表済みのものを集めたといった感じです。

 ウソ発見器のガジェットは、当然といえば当然ですが、おもちゃです。一発ネタとして遊ぶ以上の活躍は難しいと言わざるを得ないでしょう。なお、動作には単4乾電池2本が別途必要なので、どこかからか調達してください。電池蓋を開けるのに+ドライバーも要ります。

 この2点に、数量限定版9240円(税込)と通常版7140円(税込)の価格差を認めることができればいいですが、特別に想いがない限りは通常版で間に合うでしょう。筆者は販売店が独自に付けてくれる特典を狙って限定版を複数個購入しましたが、まあ、そういう記念品的な意味合いですね、限定版って。もちろんながら、ゲーム内容に差はありません。


 長々と紹介してきましたが、最後に「STEINS;GATE」を購入しようとケツイした方にいくつかアドバイスを。

・一切の情報を遮断しなさい――実にさまざまな方法でプレイヤーに驚きを与えてくれます。シナリオの重要なネタバレはもちろん、ちょっとした演出のバレもできるだけ避けたいところです。それだけ純粋に本作を楽しんでもらいたいです。
・ボイスは消さないで――声優陣の演技力がとても高いです。とくに主人公の岡部倫太郎の演技は白眉。音声スキップせずに、声による演技の凄さを感じてください。なお、登場人物によっては音量が小さく聞きづらい場合があるので、ヘッドフォンがお勧めです。
・プレイ時間は計画的に――筆者は1周目で約30時間、全ルートクリアで約60時間かかりました。総プレイ時間よりも、一度始めると展開に眼が離せなくなり、止め時を失ってしまう点が危険です。気付いたら空が明るかった、なんて余裕です。



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